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「道路どこ?家なくなった」津波にのまれた福島・南相馬

 海岸線一帯が津波に襲われた福島県南相馬市。小高区岡田の村井文子さん(63)は12日午前10時過ぎ、家族7人で自宅2階に避難していたところを同市消防署員らにボートで救助された。津波の水は一時は約3メートルある自宅1階の天井まで届いた。救助車に乗り込んだ村井さんは「もうダメかと思った」と声を震わせた。

 前日午後3時過ぎ。他の家族6人と自宅1階にいた村井さんは「ゴーッ」といううなるような音と、「津波だ!」と外で誰かが叫ぶ声を聞いた。89歳の父と足腰の弱った88歳の母を2階に担ぎ上げ、小学生の孫2人ら家族全員が2階に避難しおえた約30秒後。窓が割れる大きな音とともに水が家に入ってきた。

 ふと隣の家を見ると、屋根に顔なじみのおじいさんが1人で避難していた。「がんばって!」。窓からみんなで必死に声をかけた。だが、日が暮れるとおじいさんの姿は見えなくなった。

 明かりは懐中電灯とロウソクのみ。布団に家族みんなで入って暖めあった。

 朝、明るくなったとき、おじいさんの姿は屋根の上になかった。だれも救助に来た形跡はない。「何もなければいいのだけれど」。救助車の中で村井さんが顔を曇らせた。

 小高区大井の中山ユキ子さん(69)は夫で農業の隆さん(69)と11日から連絡がとれていない。

 隆さんは地元の農家と海岸近くの共同農場を運営している。地震発生当時は、同僚と2人で農場でトラクターを使い、大豆の種をまく作業をしていたという。ユキ子さんが自宅で待っている間、地震が起きた。

 避難した同僚の男性によると、隆さんは「おれは作業を終えてから戻る」と言って1人残ったという。ユキ子さんは「ここは、こんな大津波が来ることは今までなかった。本人も津波が来ることを知らなかったのではないか」と悔しそうに話した。

 新田川の河口近くに位置する市東部の上渋佐地区は、集落のほぼすべてが津波にのまれた。海岸から1.5キロほど離れた内陸でも、磯の香りが辺りに漂う。倒壊した家屋、押し流されてきたとみられる屋根、傾いた電柱。ぞうきんを絞ったようにねじれた車が折り重なっている。

 難を逃れた数人の住民らが自宅の様子を見に来ていた。「どこが道路? 家がなくなっちゃった」。口元を両手で覆い、ぼうぜんと立ちつくす。「避難所が寒いから」と、散乱している泥まみれの上着やタオルなどを拾って持ち帰る人もいた。

 橋本正雄さん(67)は地震発生時、立っていられないほどの揺れに襲われた。ダダダダダダ――。家の中で物が飛び、屋根瓦が落ちた。「家がつぶれる!」。妻の美紀子さん(62)と外に飛び出た。

 「津波が来るぞ。逃げろ」と遠くで誰かが叫んだ。巨大な黒いカーテンのような波が家々に覆いかぶさり、こちらに向かってきていた。車に飛び乗り、海と反対の方角へ逃げた。

 高台の親類宅で眠れぬ夜を過ごし、明るくなるのを待って自宅を見に来た。木造平屋建ての建物は姿をとどめていたが、中は泥に覆われて足を踏み入れられない。「この辺りには50軒以上の家があった。隣近所の人たちが無事なのかすら分からない」。橋本さんは声を震わせた。

 南相馬市によると、道路が寸断され、100人単位で孤立している地区もある。「集計が追いつかず、誰が行方不明かわからない」と担当者は話した。(古庄暢、富田祥広、茂木克信)

http://www.asahi.com/special/10005/TKY201103120368.html


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tag: 津波 生還 スクラップ 朝日 家の中 子供 高齢者

命かけ残した津波写真 南三陸職員、流されるまで撮影

 津波で破壊され、骨組みだけになった宮城県南三陸町の防災対策庁舎。その屋上で、建物が津波にのみ込まれる瞬間まで、写真を撮影し続けていた町の広報担当者がいた。自らもその直後に流されたが、上司に救助され、一命を取り留めた。「この記録だけは残したい」と、抱え込んだカメラは水につかり壊れたが、データだけは残っていた。

 同町総務課職員の加藤信男さん(39)。当時、企画課で広報を担当していた加藤さんは地震発生直後からカメラを握りしめ、棚が倒れて書類などが散乱する役場内を撮り続けた。

 町の様子を撮ろうと外に出たとき、役場の隣に立つ高さ13メートルの防災対策庁舎から「すぐ上がれ、津波が来るぞー」という声が聞こえ、階段を駆け上った。

 屋上にたどり着くと、海の方から黄色い煙を巻き上げ、津波が押し寄せてくるのが見えた。民家や車をのみ込みながら、庁舎に押し迫ってくる。加藤さんは「ずっと(カメラの)ファインダーをのぞいていたので、不思議と恐怖は感じなかった」。

 津波は時間とともに、どんどん高くなった。ちょうど3階建ての庁舎の屋上にまで達しようとしたとき、誰かが「来るぞ、つかまれー」と叫んだ。夢中でシャッターを押し続けていた加藤さんは、慌てて周囲を見回したが、つかまる場所がない。黒い波に足元をさらわれた瞬間、反射的にカメラをジャンパーの内側に押し込んだ。

 「自分が死んでも、この記録だけは残そう」

 全身がのまれて流された。ふと波間に顔が出たとき、「おれの手につかまれ!」という大声を聞いた。遠藤健治副町長だった。とっさに腕をつかんだが、また体は水面下に潜った。息ができず数分。「ちっくしょー、死にたくない!」。頭の中で何度も考えたが、そのまま気を失った。

 水が引いて気がついたときには、庁舎の屋上の端から端まで十数メートル流されていた。手すりをつかんだ副町長が、もう片方の手でずっと離さずにいてくれた。「いくら感謝しても、感謝し切れません」と話す。

 庁舎の屋上には当時、約30人の町職員らが避難していたが、生き残ったのは11人だけ。デジタルの一眼レフカメラは使えなくなったが、データは奇跡的に残っていた。加藤さんは「生き残った南三陸の人々と一緒に、これからも一生懸命頑張っていきたい」と話している。(三浦英之)

2011年5月21日14時0分
http://www.asahi.com/special/10005/TKY201105210191.html

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tag: 津波 生還 公務 写真 朝日 スクラップ

陸前高田市長の妻、遺体で確認 激務のなか安置所で再会

1152人が死亡、1231人が行方不明となっている岩手県陸前高田市で、戸羽太市長(46)の妻・久美さんが遺体で見つかった。戸羽市長が5日夕、市内の安置所で確認した。震災直後から災害対策に追われ、妻を捜せずにいた戸羽市長は「見つかってよかった」と涙を浮かべた。 戸羽市長によると、見つかったのは、自宅から200メートルほど坂を上った場所。5日午後、警察官から知らされた。公務のためすぐに安置所に行けず、対面できたのは数時間後。「ごめんな」と何度も声をかけた。前日の4日は久美さんの39歳の誕生日だった。

 震災時、戸羽市長は市役所の屋上に避難した。自宅は海から見て、市役所よりも奥にある。その自宅の方まで津波が襲うのを、不安とともに見つめることしかできなかった。

 「逃げていてくれ」との願いは届かなかった。自宅にいた久美さんは、避難するために近所で声をかけ合っていたところを津波に流されたという。

 「11日午後2時40分」。久美さんと最後に交わした会話の通信記録を携帯電話に残している。「今日は早く帰れそうだ。焼き肉でも行かないか」という市長に、久美さんは「子どもたちが帰ったら聞いてみるね」と喜んだ。地震が起きたのはその数分後だった。

 震災翌日以降、災害対策本部が置かれた市の学校給食センターで寝泊まりしながら、住民の安否確認や救援物資、燃料の確保などに追われてきた。小学生の息子2人は親戚の家に避難した。「妻を早く見つけてあげたい」。常に思っていたが、捜しに行く時間はなかった。

 その間に、長男の太河君(12)が黙って母親の捜索願を災害対策本部に出していた。1人で不安に思い、届け出たようだった。

久美さんの遺体と対面した翌日も、災害対策本部で職務にあたる岩手県陸前高田市の戸羽太市長=6日午前、平塚写す

戸羽市長の妻の久美さん
 東京都内で育った戸羽市長は28歳の頃、父親の地元の陸前高田市に移り住み、食品会社に入った。そこに総務担当として入社してきたのが、久美さんだった。いつも自然に振る舞う姿にひかれ、間もなく結婚した。

 震災の後、戸羽市長は菅直人首相に復興への支援を求めて直訴し、避難所を回って市民を励まし続ける。多くの市職員が職務中に津波に巻き込まれ、身内を亡くした職員も少なくない。

 「私だけがつらいわけではない」。戸羽市長は口癖のように繰り返している。(平塚学、井上裕一)

2011年4月6日15時0分
http://www.asahi.com/national/update/0406/TKY201104060202.html

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