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せっかくだから、津波の話を聞いていって

保育士仲間の先生と共に、高台の避難所の保育園の園庭から津波の被害にあった街を見下ろす。
やはり言葉が見つからない。
家を失うこと、家族を失うこと・・・それも一瞬で。
当たり前の日常生活を送っていた中で・・・一体どれほどのことだろう。
私たち二人は、呆然と立ってその景色を見続けていました。
今の時代を生きていて、こんなに冷たく悲しい景色を見たことがありませんでした。
ここに来たんだから、多くの人に伝えなくちゃいけない、そう思って
景色を写真に残そうとしましたが、手が震えてしまいその日は撮ることができませんでした。

ちょうどそこに、一人の男性が通りかかりました。
避難所で生活されている男性で、
「そこが俺の家だよ。」
と、保育園の真下にある、一軒の家を指差して教えてくださいました。
「俺の家以外はみんな流された。どんなに基礎が立派でも、簡単に流れるものだ。」
と少し津波の話をしてくださいました。
保育園の下にある地区の方々は、ほとんどの方が行方不明になったり、
流されてしまったとのことで、
聞いていて心が痛いのも悲しいのも通り越していました。
行方不明になった方の中には幼い子どももいたし、
ここから流された遺体が仙台で発見されたという方もいたと聞きました。

私は、体験されたことに対して何と言って声をかけたらよいのか本当にわからず、
そしてうなづいて聞くこともできずに、ただ景色を眺め続けてあの日起こった出来事を想像していました。
仲間の保育士もじっと男性の話に耳を傾けているだけでした。

話が終わると、
「寒いから。もう中に入ろうか。」
と、男性は優しく声をかけてくださり、私たちは無言でみんなの待つ部屋へ戻りました。

私たちが男性と出会った話をすると、
ちょうど避難所の保育園の園長先生が
「せっかくだから、津波の話を聞いていって。」
と時間をくださいました。

私たちの部屋に、二人の男性が入ってきました。
一人は、先ほど園庭で出会った男性。
そしてもう一人は海のお仕事をされている男性でした。

海のお仕事をされているかたは、1年間いろいろな場所を航海をされていて、
1ヶ月だけ自宅に戻るという生活を続けてこられたそうです。
【海は生活の場だ。】
と何度もおっしゃっていました。

ちょうど3/11の日、
日本に戻ってくる1ヶ月間の最初の日で、朝8時に仙台港に到着したそうです。
そして、岩手県の自宅に戻って落ち着いて奥様とコーヒーを飲もうとした時に
大きな地震が起こったそうです。

岩手県では、ちょうど2~3日前にも同じくらい大きな地震があったそうですが、
その時はそれほど津波も大きくなく、その津波の速さ・高さのイメージを持ってしまった方々は逃げ遅れてしまったのではないかと言っていました。

男性はずっと日本にいないので、地震の大きさがどのくらいなのかよくわからなかったそうですが、奥様の様子で普通ではないことに気がつき、
高台にある保育園を目指して避難することにしたそうです。

津波の避難警報が鳴り、外に出ると
遠くの線路の向こうで海が1回引けるのを確認した。
その後、住宅地に向かって水柱が立ったのが見えた。
頭上、住宅の高さをはるかに超えていて、山の大きさの水柱が
どーんと立って、同じような大きな波が30分ごとに住宅地へ押し寄せた。
90歳、91歳、80歳の父母を連れて、とにかく高台へ逃げることに必死だった。
靴を履かせるのも一苦労だった。
目の前で、子どもや多くの知り合いが流されるのを見た。
中には自分の両親や子ども、家族を・・・流されるのを見た人も大勢いるだろう。
何もしてやれなくて、
ただ流されていくのを見送ることしかできなかった。
自分も波にのまれてしまった。
波にのまれながらも手を伸ばすと、そこにつかまる何かがあった。
どうやら木のようだ。とにかくはなさないようにその木につかまった。
運が良く、それが流木ではなくて保育園周辺に植えられていた木だったため、
水が引いてから、助けられた。」

そこで先ほど園庭でであった男性も話しだしました。
「こいつと俺は近所に住む幼なじみ。
俺の家は流されなかったが、二階の窓枠の上まで津波が押し寄せてきた。
自分の家族を二階に避難させて、自分も二階に上がったが、
目の高さまで津波がやってきた。
助けてほしいと窓の外を見ると、ちょうどこいつが木につかまっているのが
見えたんだよ。
でもお互いに、助けられる状況ではなかった。」

保育園に避難でされた方は、寒くて暗い夜を
体育館のカーテンや、園児の布団などにくるまって過ごしたとのことです。
どんなに不安だったでしょう。

「友達は、ガソリンを運ぶための車を運転していて地震にあって
そのまま燃えてしまった。
津波だけではなくて、火災も広範囲で起こった。
山田町の駅は、家事で燃えてしまって何もない。
爆撃で一発でやられてしまった。
山は一週間燃え続けた。」


津波、と聞くと私たちは透明な水、海の波のようなものを想像します。
しかしそうではなく、あの日の津波は
「黒い大きなかたまり」だったそうです。
それが頭上をはるか高く超えてだんだん大きくなって押し寄せてくる恐怖。


「保育園の園児の中にも、
津波にのまれてしまい呼吸停止になってしまったが、息を吹き返した子もいた。
まだ行方がわからない子もいる。」

「保育園で働いている皆さんに、覚えておいてほしいのは、
地震や災害が起こった時に、老人や子どもはわれわれと同じように
行動はできないということ。
その一瞬でどう人生が変わるのか、生きるか死ぬかは紙一重。」

「自分は長男なので、自分の家が流されたということで
親戚が集まるみんなの憩いの場所がなくなってしまった・・・
ということが悲しかった。
津波の被害があったけれど、この街と海が好き。またここに家を建てて
暮らしたい。」


「山田町はいいところだよ。
海と山がすばらしい。
魚も山のものも両方楽しめる。とてもおいしい。
美しい山田湾は、海の十和田湖と呼ばれている。」

「家や家族が流されて、失ったものは大きかったけれど
この震災で得たものもある。」

「それは、人々の優しさとありがたさ。
いろいろな地域の方が、この町のことを心配してくれて
いろいろな人が助けてくれる。
人間の優しさを感じているところです。
地震が来なければ気がつかなかった。」

「また、この保育園の避難所は、人当たりの良い女性の園長先生が
優しくリーダーシップをとってくださるおかげで
みんな元気に過ごせている、感謝している。」

お話してくださった男性二人は、真剣な表情の中に
優しい笑顔も見せてくれました。
聞いている私たちは、質問したいこともたくさんありましたが
ただただ涙しか出てこなくて、それを失礼なのかなと考える余裕もなく
聞いた話に反応する自分の体に任せるままでした。

とても貴重なお話を聞かせていただき、男性二人が部屋を出て行ってからも
いろいろな思いで皆胸がいっぱいになっていました。
テレビで見ていて、知っていたはずなのに・・・。
実際はもっと恐ろしい出来事だったということが伝わりました。

そして、そのような経験をされてもなお、
この街の人々が私たちに優しく話しかけてくれたこと。
避難所の保育士の先生方や園長先生の笑顔が
どれだけ多くの人の勇気になっているのだろうかということを考えました。
自分が辛い思いをしている時に、笑顔を見せられるだろうか。
自分が大変な思いをしている時に、自分以外の他の人のことを
思いやることができるだろうか。


そんなことを考えながら、
再びカーテンを開けて、窓の外に広がる瓦礫に変わってしまった街を
眺めてから、寝袋に入って眠りました。

http://blog.livedoor.jp/cavk-love/archives/52198147.html


テーマ: 東北地方太平洋沖地震~The 2011 off the Pacific coa~
ジャンル: その他

tag: 津波 生還 ブログ レポート 避難所

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